野良猫少女

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「んっ……ちゅっ、ちゅっあむ……んんっ」

 ベッドの上で少女が跪き、グレーのスーツを着た若い男のモノを愛おしそうに舐め上げる。少女の舌が這い回るたび、男はぞわぞわと背筋を走る快感に呻き声を漏らす。

「んふふっ。お兄さんもうすぐイキそうって顔してる。案外早いんだね」

 唾液まみれのペニスから口を離し、少女は得意気な顔をする。

「この……生意気な台詞は最後まで面倒見てから言え」

 男は少女の頭を両手で掴んでペニスをくわえさせ、彼女のことなどお構いなしに腰を動かし始めた。少女は始め耐えるように目を閉じていたが、くぐもった声は次第に甘い響きを帯び、熱く潤んだ瞳で男を見上げてくる。エロティックな少女の表情にたまらなくなって、男は喉の奥めがけて射精した。

「んーーーっ!? んぐっ……んっ、んっ」

 ドロドロした熱い液体をいきなり注ぎ込まれて、少女は声にならない悲鳴を上げたが、ペニスから顔を離そうとはせず、舌を動かしてペニスの先から漏れる最後の一滴まで、丁寧に舐め取っていく。そしてゆっくりと口からペニスが引き抜かれると、小さく喉を鳴らして男の精液を飲み込んだ。

「んくっ……ぷはっ、はあ、はあ……たくさん出たね。気持ち良かった?」

 唇のまわりに付いた精液を舐めながら、少女は微笑む。淫靡さと無邪気さを併せ持つ少女の姿に軽い目眩を感じながら、男の理性は急速に理性を取り戻しつつあった。

(俺、なんでこんな事になってるんだっけ――)




 津田雄介は中堅企業に入社して三年目の、どこにでもいる平凡なサラリーマンだった。恋人もなく、忙しくも代わり映えしない毎日に退屈を感じてはいたが、不景気な世間を思えば幸せだと自分に言い聞かせ、自宅と会社を行き来するだけの日々を過ごしていた。
 ある日の帰り道、雄介は何気なく覗いた路地裏で、隠れるように眠る一人の少女を見つけた。最初はマネキンが置いてあるのかと思ったが、興味本位で近づいてみると、まだあどけなさの残る顔立ちの、生身の少女だった。黒髪のショートカットで、グレーのパーカーにデニムのスカートを履いている。スカートから覗く生の足が、独り身の長い雄介にはいささか目の毒でもある。

「えーと、お節介だが……寝るならもっとマシな場所を選んだほうがいいぞ。こんな場所じゃ身体に毒だし、不用心すぎる」

 目を覚ました少女は、雄介をつま先から頭のてっぺんまで眺めると、立ち上がってにっこり笑う。

「じゃあお兄さん、私に寝床用意してくれない?」
「はあ?」
「寝る場所がなくて困ってるからこんなとこで寝てたの。だから責任持ってね」
「なんでそうなるんだ」
「え……まさか声かけておいて、知らんぷりして帰るつもりじゃあ」
「……」

 雄介が踵を返して立ち去ろうとすると、後ろから肩を力一杯掴まれた。

「どこ行くつもりお兄さん?」
「離せ、俺は用事を思い出した」
「ひどーい! いたいけな少女が困ってるんだから、救いの手を差し伸べてついでにご飯食べさせてくれたりしてもいいじゃない。ねっ、ねっ?」
「そんな義理は無い」
「こ、この……人でなし、冷血漢! ちょっとくらい助けてくれたって!」
「一般的に、見ず知らずの相手に色々要求するのはたかりと呼ぶと思ったが」
「こうなったら……」
「えっ」
「やめてー、いやーっ、そんなところ触らないでこの変態ーッ!」
「そ、そうきたかっ!?」
「誰か、誰かこの変質者を――むーっ!」

 雄介は少女の口を手で押さえ、回りを気にしながら耳打ちする。

「わかった、メシは食わせるし寝床も用意してやるから黙ろうかこんちくしょう」
「えへへー、やったね」

 にぱっと笑う少女の前で、雄介はがっくりと肩を落とすのだった。
 仕方なく自分のマンションに少女を案内し、買い置きの食材で適当に夕食を済ませると、少女にシャワーを貸してやった。外ではよく見えなかったが、彼女は服も髪もずいぶんと汚れていたからだ。自分の部屋で若い娘がシャワーを浴びている。なぜこんな状況になってしまったのかとため息をついていると、彼女はタオル一枚巻いた姿で雄介の前に戻ってきた。

「ただいま戻りましたー。湯上がりタマゴ肌でーす」
「こら、服を着ろ」
「汚れてたから洗濯しちゃったよ。下着もぜーんぶ」
「あのなあ……お前は自分がなにをしてるのか分かってるのか」
「いーじゃん、こんな可愛い女の子と一緒にいられて、ホントは嬉しいんでしょ」
「やれやれ、とんだ野良猫に懐かれたもんだ……」
「あー、なんか傷つくなあ、それ」
「いいか、分からないならはっきりと言ってやる。ここは独身男の部屋で、年頃の娘が気楽に遊びに来て良い場所じゃないんだぞ」
「もしかしてお兄さん……」

 少女は手をポンと叩き、雄介をまじまじと見る。

「セックスしたいの?」
「ぶっ!?」
「私だってそこまで恩知らずじゃないよー。泊めてもらうからには、ちゃんとサービスするから」
「なっ、なんでそうなる。俺は別に――!」
「まーまー、無理しなくてもいいって。お兄さん結構好みだし、いいかなーって」
「おいこら、ちょっと待っ――!」

 後は彼女に押し倒されて、雪崩式ジャーマンスープレックスの如し。というわけである。

(――ああ、確かこんな風だったような。って、どんな例えだ)

 少女は雄介のシャツとズボンを脱がせ、続きをしようとせがむ。女は男の三歩後ろを歩けなどと言うつもりは無いが、今の若い娘はこんな風に、控えめさのカケラも無いものなのか――そんなことを考える自分がオヤジっぽくて、雄介は少し泣けてきた。

「ねえねえお兄さん、まさかコレで終わりなんて言わないよね?」
「ったく、子供のくせに……どこまでマセてるんだお前は」
「身体は大人だもーん。ほらほら、おっぱいちゃんと育ってるよ」



 確かに発育の良い胸を自分で持ち上げて、少女は笑う。あまりにあけっぴろげな態度に、雄介は少々頭が痛くなってくる。

「あのな……恥じらいだとかそういう感情は無いのか?」
「仕方ないでしょ、コレが私の性格なんだし」
「わかった。もういいや。とりあえずここに座れ」
「はーい。優しくしてね」

 少女をベッドの真ん中に座らせ、雄介はその後ろに回り込んで座る。そして抱きかかえるように両腕を回すと、少女の乳房を揉み始めた。

「あ……んっ」

 愛撫を初めてすぐ、少女の吐息が甘いものへ変わる。演技ではなく、純粋に感じていた。

「へえ、感じやすいんだな」
「だって……んんっ、後ろからって興奮するし……はあんっ」
「こうされるのがイイってわけか」

 雄介は手を大きく動かしたり、乳首をつまんで弄ぶ。

「やんっ、ああっ、ああんっ……お兄さんそれ気持ちい……うあっ!」

 手は動かしたまま首筋に舌を這わせると、少女は身体を仰け反らせて切ない声を上げた。

「やっ、やっ、気持ちいいっ……そ、それ以上されたらもうっ」
「なんだ、首と胸だけでイキそうなのか?」
「うんっ……うんっ、も、もう私……」

 そこで、雄介は手を止める。

「えっ、なんで?」
「大人をからかった罰だ。どうして欲しいのか、ちゃんとお願いしてみろ」
「うう……続き、して」
「人にものを頼むときの言葉じゃないな。そんなんじゃ社会でやっていけないぞ」
「お、お願いします……もっと、気持ち良くして……ください」
「よしよし、よくできました」

 少女の頭を撫でてやり、雄介は再び手を動かし始める。手のひら全体で胸を揉み、上下に撫でたりさすっているうちに、少女は絶頂を迎えて力なくうなだれてしまった。

「はあ、はあ、はあ……」
「まだ終わりじゃないぞ。さあ、四つん這いになって尻をこっちに向けるんだ」

 少女はコクリと頷き、犬のようなポーズを取って雄介を待つ。

「従順だな。お前もしかして、マゾの素質があるんじゃないか?」
「そんなの考えたこと無いからわかんな……ああんっ」

 尻の間に隠れた秘裂を指でなぞると、充分に濡れている。

(よし、このまま行けそうだな)

 雄介は張り詰めたペニスを潤んだそこに当て、ゆっくりと腰を送り出す。

「あ、あ、ああっ」

 入り口は狭くきつかったが、少女の秘裂は雄介のペニスを全て受け入れた。彼女も興奮しているのか、じっとしているだけでも膣壁がヒクつき、きゅっきゅっと締め付けてくる。

「よし、動くぞ……」

 最初から手加減をする気は無く、雄介は激しく腰を打ち付ける。防音が効いている部屋で良かったと思うくらいに少女は嬌声を上げ、獣のように責め立てる雄介の動きに耐えていた。二人が繋がっている部分からはぐちゃぐちゃと卑猥な音が響き、溢れた愛液は太ももにまで垂れている。

「あんっ、あんっ、ああああーーーーっ!」

 小さな背中を桜色に染めて、少女は二度目の絶頂を迎える。雄介は余韻に浸ってボーッとしている少女を仰向けに寝かせると、まだ収縮が収まらない秘裂の奥へ再び挿入し、律動を再開する。

「やっ、ま、まだダメ……イッたばかりなの……にぃ」
「おいおい、自分だけ気持ち良くなるのはずるくないか?」
「あっ、あっ、やあぁっ!」

 肌を桜色に染め、少女は喘ぎ声を漏らす。揺れる乳房を掴み、彼女の中を奥まで責め立てるたびに、膣内は吸い付くように締め付けて、雄介を放すまいとする。そんな反応を見ていると、もっともっと彼女をいじめてみたくなる。もちろん、女に手を上げる趣味など無いのだが。

「ほんと、ガキのクセにエロい奴だなー」
「だ、だって凄……あんっ、気持ちいいんだもん」
「気持ち良ければ誰でもいいんじゃないのか?」
「ちっ、違っ、違……ひうッ」
「こんなに感じておいて、説得力がないぞ」
「だって……お兄さんが優し……からっ」
「……案外懲りない奴だな。まだ俺をからかってるのか」

 言いながら雄介は、少女に覆い被さるようにし、より激しく貫くように腰を動かす。

「うああっ! あっ! あっ! あっ!」
「ほらみろ……優しい奴がこんな事するか? ほら、ちゃんと言ってみろ」
「あうっ、んんっ、はあっ、はっ……!」

 少女は喘ぎながら、いやいやをするように首を振る。喋ろうとしてはいるが、上手く舌が回っていない。その時、雄介は少女の目に涙が滲んでいるのを見た。

(ありゃ、いじめすぎたかな……?)

 本気で嫌がられたり後で泣き出されては困ると思い、雄介は少し勢いを緩めてやる。

「おい、大丈夫か?」
「うん……だ、大丈夫、だから……っ」
「だから?」
「も、もう少しでイキそ……なの。だから、お願いっ」
(なんだ、心配して損したな)
「お兄さん、もっと……もっとお願い」
「わかった。そろそろ俺も出すぞっ」

 雄介が勢いを強めると、少女がひときわ高い声を発して仰け反った。同時に、雄介は彼女の奥に、何度も熱い精液を放った。

「く……ううっ!」
「あっ、あああ……いっぱい出てる、お兄さんの……」
(つ、疲れた……)

 久々のセックスは気持ち良かったが、仕事明けに激しく運動してしまったため、雄介はベッドに突っ伏したまま動けなかった。しばらくすると少女は、雄介の顔をじっと見つめたまま話しはじめた。

「ふぁぁ、凄かったぁ。ねえお兄さん、大人ってみんなこうなのかな」
「さ、さあな。人によりけりなんじゃないか?」
「あのね、私……誰とでもこんな事してるわけじゃないんだよ。信じてもらえないかもしれないけど」
「……」
「お兄さんの前にも、いろんな人に声かけられたよ……でも、みんな下心が見え見えでさ。なにしてるの? どこから来たの? 名前は? とか。ストレートに援交しようっておじさんもいたっけ」
「……」
「お兄さんだけだったんだ。なにも聞かずに私を心配してくれたの」
「おかげでメシと風呂とベッドをタダで提供するハメになったけどな」
「ほら、なんだかんだ言って優しいんだよね、お兄さん。それに気持ち良かったんだからいいじゃない」
「だからそう言うことを……あー、もういいや」

 言い返したところできりがないと思い、雄介はため息をつく。

「……ねえ、知ってる?」
「ん?」
「野良猫だって、寝床はちゃんと選ぶんだよ」

 そう言って微笑む少女を可愛いと思ってしまった自分に、雄介はちょっぴり負けた気がした。

「っと、そういえば。ここまでしておいて、互いに名前も知らないな」
「あはは、そうだね。お兄さんったら本当になにも聞かないんだもん。ドライな人だって言われない?」
「いや、それどころじゃなかったというか……」
「でも、しつこく色々聞いてくるより私は好きだなー」
「津田雄介だ。お前は?」

 少女は少しだけ考えた後、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「キスしてくれたら教えてあげる」
「あのな」
「だって、まだしてもらってないもん。それとも……イヤ?」
「やれやれ……大胆なんだか純粋なんだか分からんな」

 雄介は少女を抱き寄せ、キスをした。唇をついばみ、舌を絡ませてから顔を離すと、少女は満足そうな顔をしていた。

「えへへ、ありがと。私の名前はね――」

 雄介は薄々感じていた。退屈で平凡な日常は自分の元を去り、良くも悪くも慌ただしい日々が自分に訪れたことを。

(ま、たまには悪くないか)

 安心しきった猫のように眠る少女の髪を撫でながら、雄介は煙草に火を付けた。

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