誘惑の糸(後編)

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〜逸脱の繭〜



 均整の取れた顔立ちと美しい黒髪。男なら誰もが見とれるほどの見事な胸と、くびれた腰。すらりと伸びた足。身体のラインが分かるドレスや薄手の服を着ても、堂々と人前に出られるプロポーション。若い頃から容姿、成績とも優れた優等生として評判であり、彼女が十九の時に結婚してからも、理想の妻、理想の母親というのが、長谷瑠璃子に対する世間の評価であった。彼女自身、周囲の期待に応えるべくそうあろうと努力はしてきたが、現実は瑠璃子の頑張りとは裏腹な結末を運んできてしまった。夫の浮気が発覚し、夫婦関係が崩壊したあの時から、今まで作り上げてきた「家庭」を守ることだけが彼女の全てだった。しかし同時にそれは、瑠璃子にとって多大なストレスを与える結果となってしまう。外を歩いていると、道ばたですれ違う主婦の声が気になって仕方がない。他人の声が、視線が、自分の事を噂しては嘲笑っているんじゃないか――深い疑心暗鬼に陥った瑠璃子は、その苛立ちを娘の翔子にぶつけるようになっていく。愚かで母親にあるまじき行為だと分かっていながら、そうしていないと、瑠璃子はもう自分を保てなくなっていたのである。
 翔子は瑠璃子の言う事に逆らわず、いつも黙って従っていた。ところが翔子に家庭教師を付けると決めた時、彼女は初めてとも思える我が侭をし、どうしてもこの人でなければ嫌だと、とある家庭教師を指名した。彼は朝倉哲也といい、どこにでも居そうな普通の大学生で、なぜ彼でなければいけないのか、瑠璃子にはその理由が理解出来なかった。幸い哲也の成績は優秀な部類で、素行も悪くないという話だったので、男であるという点には目を瞑り、翔子の我が侭を通してやることにした。翔子と哲也は真面目に勉強を続けているようで、多少安心していた矢先に、この出来事は起こった。

「こ、これは一体どうなっているの」

 瑠璃子が目を覚ました時、両腕を後ろに縛られて、ベッドに転がされていた。部屋着である白のブラウスと膝丈のタイトスカートを履いたままの格好で、どうやってここへ来たのかも憶えがない。周りを見ると自分の部屋ではなく、勉強机が置いてある翔子の部屋であった。ベッドの横には勉強机が置かれ、そこに座ったセーラー服姿の翔子が、口元に薄笑いを浮かべながら瑠璃子を見ていた。

「うふふ……おはようお母さん」
「翔子、これはなんなの? あなたがこんな悪戯をしたの?」
「気分はどう? 縄は痛くない?」
「早く縄を解きなさい。どういうつもりでこんな……」
「ダメよ」
「翔子! 私の言う事が――!」
「お母さんいつも怒鳴ってばっかり。私の話なんかちっとも聞いてくれないじゃない。今日はね、お母さんとちゃんと話がしたいのよ」

 うんざりしたように声を張り上げる翔子に、瑠璃子は思わず息を呑む。娘の顔には今まで見たこともない、暗い感情が貼り付いているように思えたからだ。

「な、なにを言ってるの、私は……」

 瑠璃子が目を逸らした視線の先には、ベッドの端に腰掛けて本を読む、若い男の姿があった。眼鏡を掛けて、どこにでも居そうな容姿の青年は、翔子の家庭教師である朝倉哲也に間違いない。

「あ、朝倉さん。縄を解いてください。なぜ娘の悪戯を止めてくださらなかったのです」

 困り果てたように頼む瑠璃子に対し、哲也は読んでいた本を閉じ、やはり口元に薄笑いを浮かべて立ち上がり、言った。

「お母さん。翔子ちゃんは話がしたいと、そう言ったじゃないですか。ここはちゃんと耳を傾けてあげるべきかと思うんですがね」
「こんな事をされて、話なんか出来るもんですか。まったく、高校生の娘と一緒になって悪ふざけをするなんて、どうかしているわ」
「俺たちは大真面目ですよ。なあ、翔子ちゃん」

 哲也が翔子に目をやると、翔子も椅子から立ち上がり、こくりと頷く。そして翔子は哲也の前へと移動すると、彼の首に両腕を絡め、そしてキスをした。

「!?」

 瑠璃子は一瞬、目の前でなにが起きているのか分からず、ただ呆然としていた。翔子と哲也のキスは、ただ唇を重ねるだけのものではなく、互いに舌を絡め合い、唾液を混ぜ合わせる音を響かせる卑猥なもので、二人がすでにただならぬ関係にあることを容易に想像させた。

「な、なにをしてるのあなたたち!」
「ふふふ、見ての通りですよ。お母さんもしたことあるでしょう?」
「そ、そんな事を聞いているんじゃないわ。早く止めなさい」
「翔子ちゃんが望んでしてるんです。別に俺がさせているわけじゃない」
「あなたはクビよ。それに警察に突き出すから覚悟するのね!」

 突き刺さるような視線を送り付ける瑠璃子に対し、哲也はさほど動じた様子もなく笑う。その表情が「どうぞご自由に。最後までその気があれば」と言われているような気がして、瑠璃子は背筋に冷たい物が走るのを感じずにはいられなかった。

「はあっ……」

 キスが終わると翔子はその場に跪き、哲也のズボンに手を伸ばす。そして股間のファスナーを下ろすと、その中から哲也の張りつめたモノを取り出し、愛おしそうに撫で回し始めた。

「しょ、翔子、あなたなんて事……どこでそんな破廉恥な事を憶えたの! すぐ止めなさい!」
「私ね、結構上手になったんだよ。先生も褒めてくれるんだから」
「翔子!」
「んっ……」

 瑠璃子の制止も聞かず、翔子は舌を伸ばして哲也のそれを舐め始める。翔子が慣れた手つきと舌使いをしているのを見て、瑠璃子は身体の震えが止まらなかった。

「ああ、なんて事……」
「んんっ……ちゅっ、ちゅ……ふうっ」

 舐めるだけでは飽き足らなくなったのか、翔子は哲也のモノを口に頬張り、顔を前後に動かして味わい始めた。瑠璃子はこれ以上見ていられず、目を閉じて顔を背ける。その様子を、哲也は薄笑いを浮かべながら眺めていた。

「お願い、もう止めて、止めさせて! どうしてこんな」
「これくらいセックスには付きものでしょう。それともあなたは、ご主人にしてあげなかったんですか?」
「し、しないわそんな事」
「……本当に?」
「ほ、本当よ。そんな不潔な事なんか」

 哲也はやれやれと首を振り「それはご主人も気の毒に」と嘆息する。

「お母さん……いえ、瑠璃子さんと呼びましょう。あなたはセックスを不潔なものだと思っているんですか?」
「こ、こんな風に他人に見せびらかすものじゃないでしょ」
「なぜそう思うんです」
「なぜって……当たり前じゃないの」
「目を開けてください、瑠璃子さん。あなたの娘がなにをしているのか、もう一度よく確かめるんです。翔子ちゃんは嫌がっているように見えますか?」

 しばらくは目を閉じたままでいた瑠璃子は、やがてゆっくりと目を開けて、眼前で繰り広げられている光景を見た。翔子は恍惚とした顔つきで、瞳を熱く潤ませながら哲也を見上げている。それはいつも伏し目がちで、黙って自分の言う事を聞く娘の姿ではなく、一人の女の顔だった。

「あ、ああ……翔子……」
「んっ、んっ、んっ……んんっ! んうっ!?」

 哲也は翔子の頭を両手で掴むと、彼女の喉めがけて射精した。熱いほとばしりに驚きながらも、翔子は口を離さず、喉を鳴らして精液を呑み込んでいく。翔子の口からペニスが引き抜かれると、唾液と精液が混じり合った粘液が糸を引いて光った。その光景があまりにもいやらしく思えて、瑠璃子は顔が真っ赤になってしまう。

「いい表情ですね瑠璃子さん。自分がこうしているのを想像でもしましたか?」
「し、してないわそんな事」
「ま、どちらでも良い事ですがね」
「あなたの目的はなんなの? 私たち家族にどんな恨みがあるって言うのよ」
「恨みなんか。この子が俺を誘ってくれたおかげで、俺は自分の殻を壊すことが出来た。むしろ翔子ちゃんには感謝していますよ」
「そんな……翔子が誘っただなんて」

 口の周りを舐めながら、哲也の代わりに翔子が頷く。

「本当よお母さん。私が先生を誘惑したの。ちょっと怖かったけど、勇気を出して良かったわ。だって先生、私が思ってた通りの人だったんだもん」
「そんな、そんなの嘘よ。私はそんな風に教育していないわ。真面目で行儀の良い、どこに出しても恥ずかしくないように育ててきたのに、どうして」

 哲也はベッドに寝転がったままの瑠璃子に近づくと、彼女の目をじっと見つめた。

「言い方が違うな。親の言う事に逆らわず、周囲からの評判に答えるためだけに育ててきた。そうでしょう?」

 本音を見透かすような哲也の視線に、瑠璃子はぞっとして逃げようとする。しかし、縄で縛られた身体は、羽根をもがれた虫のように、その場で悶える事しか出来ない。

「や、やめて! 私に近寄らないでケダモノ!」
「最初に翔子ちゃんが言ったが、これは話し合いですよ。俺はあなたたち親子の関係が円満に行くよう、手助けをしてるだけ。こちらが話し合いの準備があると言っているのに、なぜ拒否するんです瑠璃子さん」
「こんなの話し合いでもなんでもない、ただの強姦よ! 許されるわけがないわ! 必ず警察に突き出してやる!」
「やれやれ……」

 翔子が悩む理由が少し分かったと、哲也はまたも嘆息する。

「それが目的なら、とうにあなたを犯していますよ。けどね、俺は単に力ずくで相手を蹂躙するなんてのは、芸が無くてあまり好きじゃないんです。ま、相手が望むならその限りじゃあないですが。それに、警察に捕まったら洗いざらい喋りますよ。品行方正の優等生で通っていた娘が、大学生の家庭教師と淫行三昧……そんな噂が広まってもいいんですか?」
「ううっ……」

 瑠璃子にとって、それはなによりも恐ろしいことだった。娘の事が警察沙汰になれば、この家の内情も世間に知れ渡ってしまうだろう。理想的な家庭と思われている長谷家が、実は崩壊寸前の乱れきった家だったなどと噂されては、瑠璃子はもう生きていけないと思った。

「お願い、もう許して。お金なら欲しいだけあげるから……」
「分からない人だな。まあいい、こっちで勝手に始めていますから、話し合いに参加する気になったら言ってください」

 哲也は翔子を呼ぶと、ベッドに寝て、服は着たまま下着を脱ぐように言う。翔子は言われた通りにし、セーラー服とスカートをたくし上げた。張りのある乳房と、あまりヘアの生えそろっていない秘所が顕わになると、翔子は羞恥に頬を染める。

「足を開くんだ」
「はい……」

 翔子は言われるまま、ゆっくりと両脚を開いていく。翔子の秘所はすでに蜜が溢れ、ぬらぬらと光っていた。哲也は再び隆起したモノを翔子の股間にあてがうと、躊躇無く腰を押し進めた。

「んああああっ!?」
「愛撫もしてないのに、奥まですっかり濡れてるじゃないか」
「だ、だって……先生のおちんちん舐めてたら、身体が熱くなって」
「お母さんの目の前で、はしたない子だ」

 瑠璃子の目の前で、哲也は腰の律動を開始する。翔子は哲也の腰を両脚で抱え込み、与えられる快感を全身で味わっていた。

「あっ、ああっ、あんっ、あんっ、はぁんっ」

 瑠璃子は目の前の光景が信じられず、そして目が離せなかった。自分の娘があられもない姿を晒し、男に抱かれて嬌声を上げている。瑠璃子は認めようとはしなかったが、彼女の身体の芯は、確かに熱く疼き始めていた。

「あ! あ! うあんっ! せ、先生気持ちいいっ、気持ちいいようっ」
「もうイキそうなのかい?」
「んっ、うんっ、イク、もうイッちゃ……!」

 翔子が声を詰まらせた瞬間、哲也は腰の動きを止めてしまう。あと少しのところでおあずけを食った翔子は、今にも泣き出しそうな表情でいやいやと首を振る。

「ど、どうして……こんなところで止められたら私っ」
「それなら、どうして欲しいのか言うんだ」
「そ、そんなあ」
「出来ないならこれで終わりだぞ」
「……かせて……ください……っ」
「よく聞こえないな」
「も、もっと動いてっ、イかせてください……っ! 私こんなの耐えられないっ」
「はは、正直に言えたね。それじゃあ……」

 哲也は腰を動かし始め、翔子を激しく責め立てた。容赦なく子宮を突き上げられ、翔子は喉を反らして悲鳴に似た声を出して喘いだ。

「ひいっ、ひ……ぐっ、イ、ク……も……イッちゃうぅぅぅぅっ!」

 翔子が絶頂を迎えたと同時に、哲也もまた射精した。秘所から引き抜かれたモノは、翔子の腹や胸、そして顔まで白濁した液体を浴びせ、穢した。

「あ、あああ……」

 繰り広げられる淫らな行為を、瑠璃子はただ見つめるしかなかった。自分が見ている物が現実なのか夢なのか、もう彼女には分からなくなっていた。

「さてと。今日はこのくらいで帰るとします。もしも話し合いがしたくなったら、いつでもどうぞ。歓迎しますよ瑠璃子さん。ふふふ……」

 哲也が去り際に呟いた言葉にも、瑠璃子は返事をすることが出来なかった。




 瑠璃子が我に返った時、翔子は何事もなかったように平然と振る舞っていた。テーブルを挟んで夕食を口に運んでいる時も、瑠璃子はあの出来事が本当だったのか訊ねようとしたが、結局それを言う事が出来なかった。夜が更け、瑠璃子は自室の姿見の前に立ち、シースルーのネグリジェに身を包む自分を見た。

「……」

 三十代の半ばを過ぎ、肌のハリや瑞々しさといった点では、娘に譲る部分がある事は自覚している。しかし体つきはますます女らしさに磨きがかかってきており、熟れた果実のような豊かな胸や腰のくびれなどは、まだまだ娘に負けていないという自負がある。スタイルを維持するために食事には気を使ったし、人知れずエクササイズに通ったりもした。だが四年前に夫が浮気をしている事が発覚してからは、全てが虚しく、ただの徒労であったという絶望感が、瑠璃子の心に冷たい風を吹き込んだ。男など信用せず、女であることを忘れよう――そう決めてずっと過ごしてきた自分の中に今、久しぶりに火種が燻り始めているのを瑠璃子は確かに感じていた。

「う……」

 昼間の出来事を思い出した瞬間、女の芯が疼く。夢うつつに繰り広げられた、娘と家庭教師の淫らな交わり。翔子は母親の自分さえ知らないような顔をして、ひたすらに快楽を求め、男を受け入れていた。

(翔子は……どんな気持ちで……)

 想像しただけで、心臓が狂ったように脈を打つ。熱を帯びて仕方がない秘所に手を伸ばすと、自分でも信じられないくらいにそこは濡れていた。

「そんな……ど……して……んうっ!」

 自分の指が敏感な突起に触れた瞬間、体中に電流のような快感が走る。瑠璃子は自分の中に毒が回っているような恐怖を憶えながらも、それから逃げ出すことが出来なかった。

「んっ……ううっ……はあ、はあ……」

 指が止まらない。秘所の入り口を指でなぞり、充血した突起を撫で回す。大量の蜜が奥から止めどなく溢れだし、太ももまでぐっしょりと濡らしていく。瑠璃子は立っていられなくなり、背中からベッドに倒れ込むと、自分の股間を夢中で弄り続けていた。

「あ、あ、ああ……くぅっ……ああああっ!」

 たくし上げたネグリジェを噛み、身体を弓なりに仰け反らせて瑠璃子は絶頂を迎えた。四年ぶり、実際にはそれ以上に長い間忘れていた悦びに浸りながら、瑠璃子はベッドの上で息を荒げている。だが彼女は、そのあられもない様子をドアの隙間からじっと見つめている瞳があることに気付いていなかった。

「うふふ……お母さん。楽しそうなことしてるのね」
「きゃあっ! しょ、翔子!?」

 パジャマ姿の翔子は、ネグリジェをめくり上げ、下半身が顕わになった瑠璃子に、カメラ付きの携帯電話を向けてシャッターを切る。瑠璃子は慌てて服の乱れを直したが、翔子の携帯電話には、決して他人には見せられない姿が撮影されていた。

「その携帯電話を渡して!」
「ダメよ。こんなにちゃあんと映ってるんだもの」
「タチの悪い冗談は止めなさい。そんな写真は今すぐ消すのよ」
「もう遅いよ、お母さん」

 翔子は携帯電話のボタンに指を乗せ、ニタリと笑みを浮かべながら、ベッドの上にいる瑠璃子へと迫る。今までは常に怯えたような表情をし、うつむきがちだった娘とはまるで違う態度と表情に、瑠璃子は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。

「私がこのボタンを押せば、写真は先生に送信されるわ……あ、もう押しちゃった」
「いっ、嫌あっ!? ど、どうしてそんな事をするの!」
「だってお母さん、すごく綺麗だったもん。先生にも見せてあげようと思って」
「ば……馬鹿なこと言わないで。翔子、あなた一体どうしちゃったの? こんな事をするなんておかしいわ」
「おかしい……?」

 その瞬間、翔子の顔に影が落ち、彼女は暗い感情のこもった声で言った。

「おかしいのはお母さんよ」
「どこがおかしいって言うの? 私は間違った事なんか」
「常に行儀良くしていなさい、いい成績を取りなさい、高校生は遊び回らず勉強していなさい――いつもそう言われてたし、言う事を聞かないとお母さんはものすごく怒ったよね。他のみんなも同じなのかなって思っていたけど、学校の友達に聞いてみたら、みんながこう言うの……翔子のお母さんはおかしい、ヒステリーなんじゃないかって」
「それは……それは違うのよ翔子」
「なにが違うの? お母さんはずっと私に押しつけてきたじゃない。少しでも気に入らない事があると、お前は悪い子だって私をぶった!」
「お願い落ち着いて。ちゃんと話し合いましょ」
「……そうよね。話し合いは大事だもんね。お互いちゃんと分かり合わなくちゃ」

 そう呟いた翔子の手には、鈍く光る手錠がぶら下がっていた。瑠璃子があっと思った瞬間、翔子は彼女に飛びかかり、両手に手錠を掛けて自由を奪ってしまった。

「なにをするの!?」
「お母さんまだ物足りないでしょ。だから手伝ってあげる」
「え、ちょっ……嫌ぁぁぁっ!」

 翔子は瑠璃子の両脚の間に割って入ると、まだ濡れたままの秘所に吸い付き舐め始めた。瑠璃子は驚いて激しく抵抗したが、大人しくしないともっと写真を撮って送信すると脅されては、娘の言う事に従わざるを得なかった。

「お母さん凄い……下着がもうぐっしょりだよ」
「ああっ、許して翔子……こんなの嫌あっ」
「さっきはあんなに気持ちよさそうにオナニーしてたじゃない。心配しなくても、ちゃんと最後までしてあげるから」
「やめっ……んうっ……ひぃぃっ!」

 翔子は瑠璃子の敏感な突起の回りを、舌と指で丁寧に愛撫し続ける。同じ女同士という事もあり、翔子は快感のツボを心得ていた。

「あっ、あっ、ダメぇっ、もうダメ……イっ……くぅぅぅぅっ!」

 秘所を執拗に責め立てられ、瑠璃子はあっけなく絶頂を迎えた。頭の中が真っ白になり、呆然とベッドに仰向けになっていると、翔子がなにやらごそごそとやっているのに気が付き、顔を上げた。翔子の手にはピンク色の、男性器を模したバイブと、丸い玉が数珠繋ぎになったものが握られており、ベッドに四つん這いになるようにと彼女は言った。

「な、なんなのそれは?」
「気持ち良くなるための道具。お母さんは見た事ないの?」
「し、知らないわ。翔子こそどこでこんな物を……」
「インターネットの通販で買ったの。お母さんが知らないだけで、今じゃ簡単に手に入るのよ」
「ね、お願い翔子、もう止めて。あなたをぶった事は謝るから、これ以上ひどい事しないで」
「ひどい事なんかしないわ」

 と、翔子は瑠璃子の秘所に、ピンク色のバイブをねじ込む。

「うあああああっ!?」
「気持ちいい事をするだけだもの、ふふふ」
「やめ……許して……っ、ひあああっ!」

 瑠璃子の秘所はそれを苦もなく受け入れはしたが、不意打ちを食らったせいで、舌が上手く回らなくなってしまった。さらに翔子がバイブのスイッチを押すと、それは瑠璃子の膣内でうねうねと動き、暴れ出した。

「やっ、ああっ、抜いて、抜いてぇ……っ」
「だーめ。これからもっと気持ち良くなるんだから、我慢しなきゃ。私ね、確かめたい事があるんだ」

 そう言うと、翔子は悶えて左右に動く瑠璃子の尻を捕まえ、溢れ出る愛液を自分の指に塗りたくると、ヒクヒクと収縮する後ろの穴に人差し指を滑り込ませた。

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 声が裏返りそうな悲鳴を上げ、瑠璃子は力いっぱいシーツを握りしめた。翔子の指は根本まで入り、それを出し入りしたり、直腸の壁を指の腹で擦り上げた。

「あうっ、ひああっ、らめ……っ、許し……あううっ!」
「あは、思った通り。お母さんもこっちが気持ちいいのね……私と同じ」

 翔子は満足げに微笑んで指を引き抜くと、代わりに数珠繋ぎの玉をひとつずつ、瑠璃子のアナルへと挿入していく。

「六、七、八……」
「うああっ……やあっ、お腹……苦し……ひぃっ!」
「九、十……全部入ったね。今のお母さん、とってもいい顔してる。凄くエッチでいやらしくて……綺麗だよ」
「あ、あああ……」

 目にいっぱいの涙を浮かべ、口元から涎を垂らす瑠璃子の頬に軽いキスをすると、翔子は耳元でそっと囁く。

「先生にこっちでしてもらうとね、もっと気持ちがいいの。今度先生が来たら、お尻の穴でしてってお願いしてみたら?」

 言いながら、翔子は数珠繋ぎの玉の紐を引っ張り、瑠璃子の中に入っていたそれを一気に引き抜いた。

「ああああああああーーーーーーっ!?」

 稲妻に撃たれたような快感が全身を駆け巡り、瑠璃子は獣のように絶叫した。膣内からバイブが抜け落ち、ビクビクと身体を激しく痙攣させた後、そのまま気を失ってしまった。




 翌朝、瑠璃子はベッドから飛び起きるようにして目覚めたが、シーツは乱れておらず、下着も綺麗なままで、どこも汚れてはいない。昨日の出来事が夢なのか現実なのか、未だに彼女は分からないでいたが、身体の奥深くに、熱い疼きのような物が残っている気がしていた。
 昼を過ぎてすぐ、再び長谷家を訪れた哲也は、いつも通りに平然とした態度であった。玄関で瑠璃子と挨拶を交わし、階段を上って翔子の部屋へと向かう。二人の様子が気になって仕方がない瑠璃子は、一度こっそりと部屋の中の様子を覗いてみたが、翔子と哲也は特に変わった素振りも見せず、机に向かって真面目に勉強をしていた。

(そうよね……きっとなにかの間違いよ。夢に決まっているわ、あんな事……)

 瑠璃子は雑念を頭から振り払い、音を立てないように部屋の前から立ち去る。一階に戻ってキッチンに向かうと、昔からの趣味であるお菓子作りの準備を始めた。今日はチーズタルトを作ると決めてあり、生地は先に用意しておいたので、クリームチーズに卵や生クリーム、砂糖を混ぜ合わせて練り、薄力粉とレモン汁も混ぜ合わせてさらに練る。それを用意しておいたタルト生地に流し込み、オーブンを一七〇度にして五十分程焼けば、チーズタルトの完成である。出来は上々で、満足のいく味になって瑠璃子は気分が良かった。熱を冷ましたタルトを切って白磁の皿に乗せ、紅茶を淹れてトレイに乗せると、翔子と哲也に差し入れをしようと、階段を上った。

「……ん……ああっ……」

 二階に上がったところで、翔子の部屋から呻き声のようなものが聞こえてきた。部屋のドアは半開きになっており、そこから中を覗いた瑠璃子は思わずトレイを落としそうになってしまった。ベッドの上に寝そべった哲也に跨った裸の翔子が、一所懸命に腰を振っていたのである。

「そ……んな……」

 夢ではなかった。忘れようとしていた記憶が否応なしに蘇り、そして今も目の前で行われている男女の交わり。娘が女の顔をして快楽を貪る姿に、瑠璃子はまたも釘付けになってしまい、その場に力なく座り込むと、二人の様子を呆然と眺めるしかなかった。

「あんっ、はぁんっ、ああっ、んんっ……」

 翔子は夢中になって腰を動かし続けていたが、やがて哲也が身体を起こすと一旦離れ、四つん這いになって彼に尻を向けた。それだけでも瑠璃子にとってはショックの大きな光景だったが、さらに衝撃を与えたのは、哲也が張りつめたペニスをあてがった場所が、女の秘所ではなく、もうひとつの穴である事だった。

(ま、まさか……)

 そんな事があるはずがないと思った矢先、翔子のアナルは哲也のモノを苦もなく呑み込んでいく。翔子は歯を食いしばり、悲鳴のような声で喘いだが、その表情は苦悶のそれではなく、快楽に満ちて溶けてしまいそうな顔をしていた。

「ひぃっ! っくぅ! ひっ、ひああああっ!」

 獣のような格好で、後ろからアナルを貫かれながら、快感に溺れて視点すら定まらない娘の姿は、どうしようもないほどにいやらしく、強烈だった。瑠璃子の両手は自然と股間や胸に伸び、自慰行為に耽ることだけで頭がいっぱいだった。

「くっ、そろそろ出すぞ翔子ちゃん……!」
「きて、きて先生ぇっ! 私の奥にいっぱい出してえっ!」

 翔子の直腸に熱い精液が流し込まれた後、ペニスが引き抜かれる。ペニスと同じ大きさに広がった穴はヒクヒクと何度か痙攣し、ゆっくりと閉じていく。穴の奥からは、どろりとした白濁液が溢れて、翔子の秘所を伝い落ちていた。

(ふふふ……)

 哲也には分かっていた。ドアの向こうに瑠璃子がいて、自分たちのセックスを覗き見していること、そして自慰を止められず、結局自分の指でイッてしまったことも。瑠璃子は震える足取りで立ち上がり、物音を立てずにドアの前から去っていく。哲也はベッドから降りてドアを開け、瑠璃子がいた場所に目をやると、床は瑠璃子の蜜液でべとべとに濡れ、その隣には作りたてのタルトと紅茶が乗ったままのトレイが置かれていた。

「こりゃ美味しそうだ。差し入れ、ありがたく頂きますよ」

 哲也はトレイを手に取り、ベッドで横たわっている翔子の元へと戻って行った。




 それからも毎日、哲也と翔子は瑠璃子が家にいるのを知った上で、セックスを繰り返した。翔子の部屋だけでなく、トイレやバスルーム、果ては瑠璃子の寝室でさえ、哲也は翔子を抱いた。さんざん二人の行為を見せつけられた瑠璃子は、ついには発狂する一歩手前の所まで追い詰められていた。限界を感じた瑠璃子は、翔子が外出している時を見計らい、相談があるからと哲也を呼び出した。

「――で、相談とは?」

 テーブルに向かい合って座る二人だったが、瑠璃子は哲也の顔を面と向かって見る事が出来ない。彼が目の前にいるというだけで、今までの出来事が思い出されて顔が熱くなってしまうからだ。

「あの、朝倉さん。もう終わりにしてください」
「なにをです?」
「そ、それは……」

 口ごもって答えられない瑠璃子を眺めながら、哲也は笑みを含んだ表情を作る。

「家庭教師の期間はまだ残っていますしね。途中で無責任に放り出すなんてできませんよ」
「……」
「ああ、それとお母さん。こないだのチーズタルト、美味しかったですよ。あんな所で覗いてないで、部屋に入れば良かったのに」
「み、見ていたの!?」
「見てたのはそっちでしょう。まあ、観客がいるおかげか、翔子ちゃんはやたらと興奮していましたけどね」
「も、もう止めて! お願いだから、私の家庭を滅茶苦茶にしないで……誰にも言わないから……っ」

 声を詰まらせ、粒の涙をこぼす瑠璃子だったが、哲也はさらに口の端を持ち上げる。

「おかしな事を言いますね。この家は俺が来る前から滅茶苦茶だったじゃないですか」
「ち、違……!」
「違わない。夫と四年も別居していながら、表面ではそれを取り繕う事だけに必死だった。娘の言葉に耳を貸さず、脅迫と暴力で抑え付け、自分が望む形に仕立て上げようとした。あなたが守ろうとしがみついていたこの家は、最初から歪みきっていたんですよ」
「わ、私は……私はただ、家庭のあるべき形を望んだだけなのに、どうして」

 哲也は席を立ち蒼白になって震える瑠璃子の背後に立つと、耳元でそっと囁く。

「家庭はこうあるべき。娘は、夫は、妻はこうあるべき……それは全部、あなたが抱いていた幻想に過ぎないんですよ」
「げ、幻想……」
「ありはしないんですよ、そんなものは。人間はもっと自由でいい。幻想の枠から一歩踏み出すことは、そんなに大した事じゃないんです」
「わからない……私はずっと、そうすることしか知らなかったんだもの。一体どうしたらいいのか……」
「それが知りたくて、俺を呼んだんでしょう?」

 哲也は白いブラウスの上から、瑠璃子の豊かな乳房を鷲掴みにした。

「ああっ、嫌ぁっ! やめ……うあっ、ああっ」
「本当に嫌なら、俺の手を振りほどいて逃げればいい。警察に突き出そうがご自由に」
「で、出来ないって知ってる……くせ……ああんっ、ああ、ダメっ」

 瑠璃子は身をよじって悶えはするが、その場から逃げようとはしない。哲也の指に揉まれて、大きな胸は様々な形に変形しては揺れ動く。

「ああっ、ダメよこんな……夫以外の人に……っ!」
「ご主人に操を立てる義理なんて無いでしょう。俺と翔子ちゃんがしているのを見ながら、自分もこうされたいと思っていたんじゃないですか? 瑠璃子さんは今、ものすごく感じているように思えますがね」
「だ、だって四年以上、男の人に触られてないのよ……仕方がないじゃないっ」
「そう、仕方ないんですよこれは。だからもっと、気持ち良くなればいいんです」
「やああっ、そ、そんな胸ばかりされた……ら……っ!」
「大きいだけじゃなくて感度も抜群か。胸だけでイキそうになってるじゃないですか」
「あっ、あっ、あっ……ダメ、ダメだめぇぇぇぇっ!」

 哲也の両腕を握りしめたまま、瑠璃子はイッてしまった。息を荒げ、顔は紅潮し、瞳は熱を帯びたまま虚空を見つめている。

「はあっ、はぁっ、はぁっ……」
「敏感ですねえ。この熟れた身体といい感度といい、瑠璃子さんは翔子ちゃん以上の素質を秘めていそうだ」
「や、やめて……あの子と……比べないで」
「さあ、次はここに座るんだ」

 哲也は瑠璃子を立たせ、テーブルの上に座らせる。瑠璃子は両脚をぴっちりと閉じ、羞恥に染まった顔を背けていたが、哲也が「服を脱いで足を開け」と命令すると、瑠璃子は耳まで真っ赤にしながらも、言われた通りにブラウスとスカートを脱ぎ、ゆっくりと足を開き始めた。瑠璃子の下着は、すでに大きな染みが出来てぐしょぐしょになっていた。

「おやおや、こんなお漏らしをして。そんなに気持ち良かったんですか?」
「ああ……もう嫌あ……恥ずかしくて死んじゃいそうよ……」
「それが良いんじゃないですか。恥ずかしい思いをすればするほど、快楽はより強くなる」

 哲也は冷蔵庫を開けて中を覗き、デザート用に作ってあった生クリームを見つけ、それを手に取って瑠璃子に近づいた。

「な、なにをするつもりなの」
「瑠璃子さん。俺が話し合いをしたいと言ったことを憶えていますか?」
「え、ええ」
「会話は言葉だけで成り立つものじゃあない。セックスも、互いを知る為のコミュニケーションなんですよ。たまにはこういう趣向を凝らすのも良いでしょう?」

 言いながら、哲也は瑠璃子の胸や太腿、下腹部、そして股間の秘所にも生クリームを塗っていく。

「だ、だからって……こんなの異常だわ、誰が見たって変態行為よ」
「裸になるのは身体だけじゃない。心も裸にして、ありのままの自分をさらけ出すのがセックスですよ。俺はそれを、翔子ちゃんに教えられましてね。さて、それじゃデザートを味わわせてもらうとしますよ。隅々までね」
「あああ、そんな……」

 全身をクリームでデコレーションされた瑠璃子にはもう、哲也に逆らう一切の気力が失せていた。彼女に残っていたのは、泥沼に引きずり込まれていくような感覚に恐怖を憶えながらも、同時にその先を期待している自分だけだった。クリームを塗り終えた哲也は、瑠璃子の身体に舌を這わせ、丹念に舐め始めていく。ちょっとしたケーキのようにも思える胸回りを舐め、先端にの充血した突起を軽く噛むと、瑠璃子は喉を反らして小さな悲鳴を上げた。

「ご主人とはこういうプレイをしなかったんですか?」
「す、するわけな……あうんっ! か、噛んじゃダメよぉっ」
「瑠璃子さんはこんなにいやらしくて感じやすいのに、もったいない」
「し、知らないわそんな事」
「こんないい身体を目の前にしておあずけを食っていたんじゃ、ご主人の気持ちも少しは分かる……しかし」

 哲也は胸から腹、そして太腿へと這わせながら舐め上げながら、こう言った。

「互いに努力が足りなかったとしか言えないな。結局ご主人は、妻の本当の姿を引き出すことが出来なかった。瑠璃子さんも、ご主人に最後まで自分の全てを見せようとはしなかったんだ」
「ああ……」

 思えば確かにそうだったと、瑠璃子は思った。自分が理想とする、夫婦としてのあり方。それを求めるばかりに、常にお互いの間には遠慮があり、溝があった。そして夫は、その溝を越えてまで瑠璃子に近づこうとはしなかったのである。

「だって、だって仕方ないじゃない。そんな事考えもしなかった。あの頃の私たちには分からなかったんだもの……うっ、ううっ」
「だから――」

 顔を背けて嗚咽を漏らす瑠璃子に、哲也はそう呟いて太腿の奥へと顔を進め、止めどなく蜜が溢れ続ける秘所を舐め上げた。

「ひううっ!? ひっ、ひいっ! き、汚いわそんなとこ……あっ、あっ、うああんっ!」
「だから俺がいるんですよ。無くした時間はこれから取り戻せばいい」
「ひあああっ、お、おかしくなっちゃうっ、ま、また……また来ちゃ……ううううっ!」

 悲鳴と共に、瑠璃子は秘所から透明な液体を拭きだして果てた。眼鏡ごと顔を濡らされた哲也だったが、彼は楽しそうに笑みを浮かべていた。

「さて瑠璃子さん。自分ばかり気持ち良くなっていないで、俺も少しは気持ち良くしてもらえませんかね」

 そう言って哲也がズボンのファスナーを下ろすと、はち切れんばかりのペニスが飛び出してそそり立った。瑠璃子は快感に痺れる身体を持ち上げてテーブルから降りると、哲也の前に跪く。それはいつか見た翔子と同じ格好であった。

「ど、どうすればいいの?」

 目の前で猛るペニスに戸惑いながら、瑠璃子は訊ねる。

「翔子ちゃんがしてたのを見てたでしょう。彼女と同じようにすればいいんですよ」
「わ、わかったわ……」

 瑠璃子は以前、目の前で翔子がしていた事を思い出し、それを真似て舌を伸ばす。

(ああ、男の人のが……こんなに固くて熱かったなんて……)

 ぎこちない舌使いでペニスを舐めつつ、これで気持ち良いのかと目線を上げてみると、哲也は「これじゃあ全然物足りない」と首を振る。そこで今度はペニスを口に頬張り、舌でしゃぶってみた。哲也のペニスは大きくて口の中が苦しかったが、瑠璃子は丁寧に、そして一所懸命に舌を動かした。

「んっ、んっ……ちゅっちゅ、あむ……んんっ、はあっ、ちゅうっ……」
「ああ……気持ち良いですよ瑠璃子さん。舌使いが丁寧で最高だ。フェラチオは翔子ちゃんより飲み込みが早い」

 そう褒められた瞬間、女の芯がきゅうっと熱くなる。それからはただ夢中になって、瑠璃子は哲也のペニスを頬張り続けた。

「そろそろ出そうだ……せっかくだから、その大きな胸でイかせてもらいますよ」
「えっ……ああっ」

 哲也は瑠璃子を床に押し倒すと、彼女に跨って、隆起したペニスを胸の間に置く。それを挟むように言うと、瑠璃子は両手で乳房を寄せ、柔らかくペニスを包み込む。

「さあ、動かすぞ」
「あっ……ああっ……ああんっ」

 胸の谷間から、亀頭が出たり入ったりしているのが見える。自分の胸が犯されているように思えるのと、ペニスの熱い感触に当てられて、瑠璃子は恥じらう前に快感を感じてしまっていた。やがて腰をひときわ早く動かし、哲也は瑠璃子の胸と顔めがけて思いっきり射精した。ほぼ毎日のように翔子と交わっておきながら、どこからこんなに出るのかと思うほど大量の精液だった。

「くうっ……気持ち良かったですよ瑠璃子さん」
「こ、こんなにたくさん出るなんて……熱くて、ねばねばしてて……凄い匂い……」

 胸と顔にかかった精液を指ですくい、恍惚とした表情を浮かべる瑠璃子を見て、哲也はそろそろ頃合いになったと確信する。

「さあ、いつまでも寝てないで。起きたらテーブルに手を着いて、俺の方に尻を向けるんだ」
「は、はい……」

 瑠璃子は従順に頷き、言われたポーズを取ると、哲也をじっと待った。男を受け入れる用意が出来た秘所にペニスをあてがうものの、哲也はそれを上下に動かしたり擦ったりするだけで、なかなか中へ突き進もうとはしない。瑠璃子は痺れを切らし、懇願するように言った。

「お、お願いっ! そんなに焦らされたら頭がどうにかなりそうよ……っ!」
「瑠璃子さん。俺はこの家の内情を知った時、こう思ったんですよ。ここはただの家じゃなくて、いびつで大きな繭(まゆ)だと。そして繭の中には、美しい蝶になる事を夢見ながら、殻を破れず羽化できない蛹(さなぎ)がいた。そう……翔子ちゃんとあなたです。俺はね、翔子ちゃんと同じように、あなたを自由にしてやりたいんですよ。あの淫乱で美しい蝶の母親は、どんな羽根を見せてくれるのか、興味がありますからね」
「自由に……私を……?」
「常識という繭からの逸脱は、ほんの一歩でも素晴らしい快感ですよ。さあ……答えを聞かせてもらいましょうか」

 答えはもう決まっていた。哲也の前から逃げ出せなかったあの瞬間から、こうなることを瑠璃子も知っていたのである。

「私を連れ出して……メチャクチャにされてもいいから、だから、だから……哲也さんのを早く頂戴っ!」
「……よく出来ました。それじゃご褒美だ」

 哲也は満足げに笑い、瑠璃子の膣内を奥まで一気に貫いた。散々に焦らされて待ちわびていたそこは大量の蜜にまみれ、哲也を受け入れた瞬間にぎゅぅっときつく締め付けてきた。

「ひいぃぃぃぃぃっ!」

 外に声が漏れることなどお構い無しに、瑠璃子は絶叫する。哲也のペニスを迎え入れただけで、絶頂を迎えてしまったのである。挿入したばかりで終わるはずもなく、哲也はお構い無しに腰を打ち付け始める。桃のような尻の間から、蜜に濡れていやらしく光る哲也のペニスが、出たり入ったりを繰り返す。


「あ、ああ……いいっ、もっと動いて、もっといっぱいしてえっ!」
「淫乱具合では翔子ちゃんといい勝負……いや、それ以上だあなたは……くくく」
「す、凄……あああぁぁぁんっ! あ! あ! あっ!」

 哲也の腰が打ち付けられる度、大きな胸がたぷんたぷんと揺れ動く。瑠璃子の背中に覆い被さり、胸を鷲掴みにしながら、哲也は耳元で囁いた。

「今日は話し合いが上手く行ったお祝いをしなきゃ。失神するまで犯してやるから、覚悟するんだぞ」
「はっ、はい……っ! 気が済むまで、していいからっ。翔子にしてたことも……お尻の穴も全部、してくださ……いっ!」
「それですよ瑠璃子さん。今のあなたは素直で美しい。俺も……手加減が出来なくなりそうだ」

 哲也は膣内からペニスを引き抜き、蹂躙を待ちわびるアナルへと突き立てた。

「ひいっ! ひぐっ……! 凄っ……凄いのっ! こんなの知らない……っ! 私っ、もうなにも考えられ……ああああぁぁぁぁーーーーっ!」

 娘の翔子と同じに、瑠璃子のアナルもぎゅうぎゅと締め付けてくる極上の名器だった。哲也は夢中になって瑠璃子を犯し続け、やがて帰宅した翔子を交えると、長谷家の淫らな宴は、ますます勢いを増して燃え上がるのだった。




 夏が終わる頃、長谷家には色々と変化があった。瑠璃子は夫との離婚調停を進める決意をしたのである。翔子の親権と慰謝料、養育費などについて弁護士と相談をする日が続き、翔子も母親の元にいる事を望むと、はっきり主張した。瑠璃子の夫は会社での世間体を気にして、騒ぎを大きくすることを嫌がったので、瑠璃子が提示した条件におおむね同意する形で、問題は決着の方向へと進んでいた。上倉市の長谷邸も、交渉の結果瑠璃子たちの手元に残ることとなったのである。

「こんにちは」

 チャイムを鳴らして玄関のドアを開けたのは、眼鏡を掛けた青年、朝倉哲也。彼を出迎えるのは、瑠璃子と翔子の美しい親子である。

「いらっしゃい先生。待ってたんですよ」
「今日は新しいタルトを作ってみたの。みんなで食べましょ?」

 靴を脱いで玄関を上がると、瑠璃子は翔子を先に戻らせてから、哲也にそっと耳打ちする。

「デザートの後は……その……」

 瑠璃子の瞳に淫らな期待の光が宿っているのを見て、哲也は笑みを浮かべて頷く。嬉しそうにリビングへ戻っていく瑠璃子の後ろ姿を眺めながら、哲也はふと思う。

(新しい繭の完成だ。モラルや常識から一歩だけ外れた場所にあって……淫靡で美しい蝶の住む、魅惑的な繭だ)

 リビングから紅茶の匂いが漂い、哲也は瑠璃子と翔子に呼ばれて返事をする。これからの生活を思って口元に笑みを貼り付けながら、哲也は二人の元へと向かって行った。

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